真田丸・第41回「入城」(1)豊臣家の苦悩が分かるナレーションに注意

ナレーション
「大阪城は、来たる徳川との戦に備えて、各地から集められた浪人たちで溢れかえっている」
徳川との戦いに備えて、続々と兵が集まっている大阪城。
ここでナレーションで「浪人たち」とあるのにご注目いただきたい。

浪人とは領地を失って無収入になった武士のことを指します。
※画像は黒澤明監督の映画「用心棒」より
【浪人に関する過去記事】
真田丸・第37回「信之」(4)改易されて浪人になるとは?

「関ヶ原で石田治部に加担し禄(ろく)を失ったた者や・・・」
ここで本多正純(まさずみ)が言っている「禄」とは、知行(ちぎょう)などとも言いますが、ようは領地から得られる収入による給料のようなもの。
正純の説明する通り、関が原の戦いで負けた側の武士たちは、その大名家が取り潰されたりしたので、無収入になってしまった人がいたのです。

例えば、ドラマでは九度山まで真田幸村を迎えに来た明石全登(てるずみ)も、主人であった宇喜多家が滅びたため浪人になっています。
関が原の戦いでは、およそ半分の大名は石田三成に味方しましたが・・・

上杉景勝のように、領地を減らされるだけで済んだ大名もいましたが、宇喜多秀家のように領地を取り上げられて大名でなくなってしまった人も沢山いました。
主人の大名家が無くなった武士はもちろん、領地を減らされた大名も収入が減るわけですから、家来をリストラする必要があります。
この結果、大量の浪人が生まれたのです。
※上杉景勝は領地が減っても家来を解雇しなかったそうですが、それでも直属の家来で無かった者はリストラにあったことでしょう。

また、真田幸村が九度山にいた14年間。
まともに戦争が無かったのもポイントです。
戦争が無ければ、兵士は不要になります。
このため、関が原の戦いで徳川家康について、領地が増えたり、または減らされなかった大名も、リストラをしていたという事情もあります。
戦争時には軍隊に沢山予算が割かれ、平和になれば軍縮になるのは、今も昔も変わらないわけです。

「雑兵(ぞうひょう)も加えれば、およそ10万」
そういった人々がなんと10万人も集まったというのですから、いかに職を失った武士が多かったかということがわかりますよね。
【雑兵】
下っ端の兵士

「太閤殿下恩顧の者たちが、殿をお守りするため続々と駆けつけております」
ですので、太閤殿下恩顧の者たちが駆けつけたというより、リストラや失業によって職を失った武士たちが集まったというのが実情でしょう。
言い換えれば、既に豊臣家に味方する大名がほぼいなかったということでもあります。
ナレーションでいきなり「各地から集められた浪人たちで溢れかえっている」とあるのは、実は食い詰めた浪人しか味方してくれない状況の豊臣家の苦境を表しているのです。
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